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過去の展覧会



高橋重友 米寿記念 エトと新春向け吉祥画展
12/19(金)〜12/22(月)

                              潔く、明るい作品世界

                                                           北尾勲

 米寿 ( 八十八 ) を来年に控え、エトのサルとさまざまな吉祥画で構成する高橋重友さんの墨彩画展が開かれる。今年四月、ダイヤモンド婚 ( 結婚 60 年 ) を記念する作品展を開いたばかりだが、その後、「毎日描いているうちに作品が溜まってきた」という。「これが最後の個展になるのでは」、そう思いながら制作を続ける高橋さん。そこには、やがて訪れる断筆への恐れを抱きながら、現役の作家としての矜持 ( きょうじ ) と覚悟が秘められているように思える。そのせいか、総じて潔く、明るい作品世界となっている。

 今展には、条幅の吉祥画や来年のエト・サルを描いた色紙をはじめ、ツルや福神、布袋 ( ほてい ) 尊、ダルマ、富士山など、正月にふさわしい作品 61 点が出品される。いずれも躍動的で心楽しい絵柄ばかり。「皆さんに楽しんで見てほしい」という画家のサービス精神が一点一点にあふれている。 

 メーンの吉祥画は、福禄寿の表情が何ともふくよかな「朝陽寿老」や「旭日波涛」 ( いずれも絹本 ) のほか、落ち着いた構図の「蓬莱の図」や「仙境松竹梅山水」、華やかな「孔雀ニボタン」、気品のある「羅浮山の梅魂 ( 梅の精 ) 」など多彩。北斎や広重など先人のものまねではなく、独自の世界を創出しようとする意欲と工夫が随所にみられ、真摯 ( し ) なこの画家の思いが伝わって来る。中でも、梅の名所、羅浮山にあでやかな衣装の女人を置いた「羅浮山の梅魂」が目を射る。「一度描いてみたかった画材」と言うだけに、積年の思いの深さ情景のはるけさの漂う印象的な作品となった。

 また、「松雲仙鶴の図」や「竜門の鯉」 ( いずれも条幅 ) など、端正な水墨画も目を奪う。ツルやコイに施された繊細な描線とそこに展開する空間とが、みる者をしばし憩わせるのである。墨彩にない、深くて奥行きのある静けさというべきか。

 このほか、布袋や翁を表情豊かにとらえた「七福神」 ( 10 F) 、「翁」 ( 8 F) 「桧に白鷹」 ( 同 ) 、「布袋尊」 ( 同 ) なども際立ち、「ザクロ」や「ボタン」 ( いずれも色紙 ) など、多彩な色彩の静物もみられる。さらに、同じ描法で三態の布袋尊を描いた作品、さまざまな表情のダルマをそろえた「だるま七題」 ( 10 F ほか ) など、それぞれの描法を楽しむことが出来る。墨彩画 ( 水墨画 ) の魅力の秘密を技巧面から開陳した試みと言えようか。たとえば、「呵々大笑」を周辺のダルマと見比べながら、その屈託のない、天真爛漫の表情をいつまでも見続けていたい。そんな思いのするダルマ一連である。

  来る年は言わずとしれたサル年。それにちなみ、さまざまな仕草と表情のサルが登場する。「猿猴捉月の図」 ( 条幅 ) をはじめ、「三猿の図」「猿回し」「三番叟」「母子猿」 ( いずれも色紙 ) など十五点。思わず笑みのこぼれるものばかりだが、中でも「猿猴捉月の図」には妙に心引かれる。月を取ろうとしているサルの、その手が異常なくらい長いのだ。サルと一体化した画家の一種の遊び心、と言うべきだろう。「楽しくて、やがて哀しくなる」構図のひとつではなかろうか。

                                     (歌人)