砂上の時間
今年でオープン10周年を迎える鳥取市内のギャラリーあんどう。 開廊の動機は、作品発表のスペースが十分とはいえない鳥取に、小さくても上質な空間を立ち上げ、地元の美術家たちを応援したいとの思いだったという。 ここでは画廊主催の企画展と、作家が場所を借りる「貸し展示」の両方が行われるため、ベテランから学生まで、油絵から布細工までと実に多様な表現を見ることができる。 そんな画廊を切り盛りしているオーナーが昨年出合ったのが、埼玉県在住の美術家・田村優幸氏だった。
平面作品からスタートした田村氏は近年、野外での泥や砂を使ったインスタレーション(仮設的展示)のプロジェクト「気跡」を多く行っているが、親交のある鳥取の美術家・フナイタケヒコ氏から、同氏らのグループが1969年に鳥取砂丘で行った野外展示の話を聞き、自らのプロジェクトを鳥取砂丘で行う構想を抱いたのだった。砂丘での下見や関係部局との交渉を重ねるなか、縁あって田村氏は画廊主と出合い、プロジェクトへの協力を得ることとなる。そしてついに実現することとなったプロジェクトに併せ、ギャラリーでの展示も計画されたが、個展よりもむしろ、鳥取在住の美術家と組むことでこれまでにないグループ展を開催できると考えた画廊主は、フナイ氏(絵画)と谷口俊氏(彫刻)、ニシオトミジ氏(絵画)、細川佳成氏(絵画)の4人に声をかけた。それが10周年記念展第一弾「現代美術ファイヴ・ワークス」展(4月10日(木)〜17日(木))となったのである。
一方、砂丘でのプロジェクトは、4月6日(日)に田村氏やスタッフ、そして共同制作参加者の手により行われる。だが、作品は撤去日の同18日までずっと作り続けられるのである。このプロジェクトを要約するなら、ある物質(今回は砂)に人間が施した行為(水で固めた砂中から流木を引き抜く)の痕跡(砂中にできる空げき、陰と陽)が、自然の力(風雨等)を受けて徐々に変化していくプロセス、つまりは時間の流れを、一瞬一瞬の砂の姿から想像力で見つめる機会の提案、となるだろう。物質が変化する過程/時間を美術表現として物質ごと提示することは、これまでも様々な手法で行われているが、流木を額縁とする「砂上で消失していく絵画」と考えるとどうか。そこにあるのは実はごく当たり前の現象なのだが、当たり前にあらためて目をこらす、ささやかな反逆の機会にもなりそうである。
(三浦努(美術評論))
「現代美術 5−WORKS展」作家紹介
■田村優幸:埼玉県川越市在住 略歴
1954 埼玉県生まれ
1977 多摩美術大学卒
1994 独立美術展(東京都美術館)
1998 ドイツ・オランダ・ベルギー美術賞展(ドイツ・オランダ・ベルギー)
EU−JAPON現代美術交流展/奨励賞(新木場SOKOギャラリー)
1999 富獄ビエンナーレ展(静岡県立美術館)
環境と都市の美術’99展(新潟市美術館)
2000 現代日本美術展(東京都美術館)
2007 現代美術CAT展(相模原市民ギャラリー)
屋内外での特異なインスタレーション「気跡」シリーズを継続。 鳥取砂丘で7回目を企画。(個展13回)
■谷口 俊:鳥取市在住
略歴
1929 台北生まれ 1951 鳥取大学卒
1968 現代日本美術展(東京都美術館)
1969〜1978 スペースプラン展(1〜13回/鳥取砂丘ほか)
1975 現代日本美術展(東京都美術館)
1976 現代日本美術展/佳作賞(東京都美術館)
1978 東京国際美術展(東京都美術館)ほか多数
60年代後半、鳥取現代美術を草創。近年は、独自の新手法による立体を追及。(個展5回)
■フナイタケヒコ:鳥取市在住
1942 鳥取県生まれ 1965 鳥取大学卒
1966、68、89 自由美術展
1989 オランダ・鳥取現代美術交流展(鳥取県立博物館)コンテンポラリーアート協会展(目黒区立美術館)
1999 シルクロ展(三鷹市美術ギャラリー)
2004 増殖するイメージ、拡大する結像・平面四人展(新宿歌舞伎町/ギャラリー渓)
絵画(平面)という媒体形式にこだわりつつ、新たな感覚の統合を求める作品を試みる。(個展14回)
■ニシオトミジ:鳥取市在住
1935 鳥取県生まれ 1957 鳥取大学卒
1962 自由美術展/以降連続出品(東京都美術館〜2007/国立新美術館)
1970 会員推挙
1975 自由美術展/自由美術賞(東京都美術館)
1979 東京展(東京都美術館)
1996 輪廻展(鳥取県立博物館)
東京、京都、大阪、鳥取で個展、2003年より毎年松山にて個展(ギャラリーキャメルK)・グループ展多数
メチエの極限をつきつめた輪廻シリーズを持続し、さらに新たな発想での仕事を掲示。
■細川佳成:鳥取市在住
1962 東大阪生まれ
1984 大阪芸術大学卒
1989 第53回行動展(奨励賞)
2001 川上奨励賞
2003 第58回行動展(会友賞)
2004 第59回行動展(行動賞)
(文化庁選抜展に推薦を受けるが、同展終了のため出品できず)
ギャラリーあんどう、ギャラリー槐、百花堂などで個展・東京紀伊国屋画廊、エル大阪、なんばパークスほかでグループ展多数
重層するイメージ、交錯する光と影の大画面を構築し、多義性をはらんだ表現手法を展開。
砂上の時間
今年でオープン10周年を迎える鳥取市内のギャラリーあんどう。
開廊の動機は、作品発表のスペースが十分とはいえない鳥取に、小さくても上質な空間を立ち上げ、地元の美術家たちを応援したいとの思いだったという。 ここでは画廊主催の企画展と、作家が場所を借りる「貸し展示」の両方が行われるため、ベテランから学生まで、油絵から布細工までと実に多様な表現を見ることができる。
そんな画廊を切り盛りしているオーナーが昨年出合ったのが、埼玉県在住の美術家・田村優幸氏だった。
平面作品からスタートした田村氏は近年、野外での泥や砂を使ったインスタレーション(仮設的展示)のプロジェクト「気跡」を多く行っているが、親交のある鳥取の美術家・フナイタケヒコ氏から、同氏らのグループが1969年に鳥取砂丘で行った野外展示の話を聞き、自らのプロジェクトを鳥取砂丘で行う構想を抱いたのだった。砂丘での下見や関係部局との交渉を重ねるなか、縁あって田村氏は画廊主と出合い、プロジェクトへの協力を得ることとなる。そしてついに実現することとなったプロジェクトに併せ、ギャラリーでの展示も計画されたが、個展よりもむしろ、鳥取在住の美術家と組むことでこれまでにないグループ展を開催できると考えた画廊主は、フナイ氏(絵画)と谷口俊氏(彫刻)、ニシオトミジ氏(絵画)、細川佳成氏(絵画)の4人に声をかけた。それが10周年記念展第一弾「現代美術ファイヴ・ワークス」展(4月10日(木)〜17日(木))となったのである。
一方、砂丘でのプロジェクトは、4月6日(日)に田村氏やスタッフ、そして共同制作参加者の手により行われる。だが、作品は撤去日の同18日までずっと作り続けられるのである。このプロジェクトを要約するなら、ある物質(今回は砂)に人間が施した行為(水で固めた砂中から流木を引き抜く)の痕跡(砂中にできる空げき、陰と陽)が、自然の力(風雨等)を受けて徐々に変化していくプロセス、つまりは時間の流れを、一瞬一瞬の砂の姿から想像力で見つめる機会の提案、となるだろう。物質が変化する過程/時間を美術表現として物質ごと提示することは、これまでも様々な手法で行われているが、流木を額縁とする「砂上で消失していく絵画」と考えるとどうか。そこにあるのは実はごく当たり前の現象なのだが、当たり前にあらためて目をこらす、ささやかな反逆の機会にもなりそうである。
(三浦努(美術評論))
「現代美術 5−WORKS展」作家紹介
■田村優幸:埼玉県川越市在住

略歴
1954 埼玉県生まれ
1977 多摩美術大学卒
1994 独立美術展(東京都美術館)
1998 ドイツ・オランダ・ベルギー美術賞展(ドイツ・オランダ・ベルギー)
EU−JAPON現代美術交流展/奨励賞(新木場SOKOギャラリー)
1999 富獄ビエンナーレ展(静岡県立美術館)
環境と都市の美術’99展(新潟市美術館)
2000 現代日本美術展(東京都美術館)
2007 現代美術CAT展(相模原市民ギャラリー)
屋内外での特異なインスタレーション「気跡」シリーズを継続。
鳥取砂丘で7回目を企画。(個展13回)
■谷口 俊:鳥取市在住
略歴
1929 台北生まれ 1951 鳥取大学卒
1968 現代日本美術展(東京都美術館)
1969〜1978 スペースプラン展(1〜13回/鳥取砂丘ほか)
1975 現代日本美術展(東京都美術館)
1976 現代日本美術展/佳作賞(東京都美術館)
1978 東京国際美術展(東京都美術館)ほか多数
60年代後半、鳥取現代美術を草創。近年は、独自の新手法による立体を追及。(個展5回)
■フナイタケヒコ:鳥取市在住
略歴
1942 鳥取県生まれ 1965 鳥取大学卒
1966、68、89 自由美術展
1969〜1978 スペースプラン展(1〜13回/鳥取砂丘ほか)
1989 オランダ・鳥取現代美術交流展(鳥取県立博物館)コンテンポラリーアート協会展(目黒区立美術館)
1999 シルクロ展(三鷹市美術ギャラリー)
2004 増殖するイメージ、拡大する結像・平面四人展(新宿歌舞伎町/ギャラリー渓)
絵画(平面)という媒体形式にこだわりつつ、新たな感覚の統合を求める作品を試みる。(個展14回)
■ニシオトミジ:鳥取市在住
略歴
1935 鳥取県生まれ 1957 鳥取大学卒
1962 自由美術展/以降連続出品(東京都美術館〜2007/国立新美術館)
1970 会員推挙
1975 自由美術展/自由美術賞(東京都美術館)
1979 東京展(東京都美術館)
1996 輪廻展(鳥取県立博物館)
東京、京都、大阪、鳥取で個展、2003年より毎年松山にて個展(ギャラリーキャメルK)・グループ展多数
メチエの極限をつきつめた輪廻シリーズを持続し、さらに新たな発想での仕事を掲示。
■細川佳成:鳥取市在住
略歴
1962 東大阪生まれ
1984 大阪芸術大学卒
1989 第53回行動展(奨励賞)
2001 川上奨励賞
2003 第58回行動展(会友賞)
2004 第59回行動展(行動賞)
(文化庁選抜展に推薦を受けるが、同展終了のため出品できず)
ギャラリーあんどう、ギャラリー槐、百花堂などで個展・東京紀伊国屋画廊、エル大阪、なんばパークスほかでグループ展多数
重層するイメージ、交錯する光と影の大画面を構築し、多義性をはらんだ表現手法を展開。