過去の展覧会



開廊500回展企画
安田みつえ銅版画展
2010.9/10(Fri)~9/15(Wed)

2002年より銅版画に取りくみ、新境地を切り開いている安田みつえさん。
今回は昨秋開催された「浜口陽三生誕100年記念銅版画大賞」入賞を 記念して、新作約30点を展示致します。
ご高覧のほどよろしくお願い申し上げます。

 

■ギャラリーあんどう企画

 

 

Galley ANDOH Diary 「開廊500回展企画 安田みつえ銅版画展」関連記事

開廊500回展企画 安田みつえ銅版画展 1

開廊500回展企画 安田みつえ銅版画展 2

開廊500回展企画 安田みつえ銅版画展 3

 

安田みつえ

「自由奔放な線と色彩」

 自由闊達な線と鮮やかな色彩が画面を乱舞する安田みつえの作品は、一見、児童画のような屈託のない即興性や偶然性に支配されているかのように見える。しかしながら、彼女の作品の変遷や銅版画という制作技法の特性を考慮するならば、伸びやかな画面の裏には、意外にもあらかじめ計算された効果や必然的な構図が隠されているような気がする。

 安田みつえは、鳥取で生まれ、鳥取大学で絵画を学んだ後上京し、研究所でデッサンを習得する。活動を開始した当初は絵画を制作していたが、2002年より銅夢版画工房にて本格的に銅版画に取り組む。この頃、主に書籍関係の装画の仕事に従事していたためか、人物や魚や草木など、直ぐにそれと分かる具象的な事物が描かれ、物語的な内容が暗示されている。聞けば、安田は帰鳥の際、海辺に出掛けて貝殻などを拾い、それらのファウンド・オブジェを作品のモティーフにするのだと言う。水槽の中で物思いにふける無表情な女性が貝殻や魚とともに単色で描かれた作品をはじめ、どこかメランコリーな画風が彼女の持ち味であった。その後、ミロを思わせる地中海風のあっけらかんとした明るい色彩の幾何学的な作風へと転じ、さらに落書き風の伸び伸びとした線が画面全体を均質に覆い尽くす作品へと移行する。安田の作品は、いわば具象から抽象へと変貌を遂げ、2009年に「浜口陽三生誕100年記念銅版画大賞展」に入賞した後は、それまでの些か予定調和的な作品から、ますます自由奔放な線と色彩が画面を横断する作品に至っている。

 多様な変化を見せながらも、安田の作品には常に偶然と必然という、相反する二つの要素が秘められているのではないだろうか。おそらくこれは銅版画というテクニックに起因するものであろう。そもそも版画とは基本的に、綿密なプランに基づいた技術である。しかし、銅版を腐食する過程で、例外なくそこには時間の経過とともに制御しがたい偶然が介入する。偶然は必ずしも必然を否定しないし、逆もまた真である。両者の葛藤の中に安田の豊穣なイメージは広がっている。

          (尾崎佐智子/美術評論家・元滋賀県立近代美術館学芸員)