2F:過去の展覧会

寺谷 忍 展 ~風景と人物を描く~

2006.11/15(Wed)~11/26(Sun)

 

 

「寺谷忍展」に寄せて

寺谷さんから個展をされることをきき、私は感激しました。大変うれしく思っています。

 個展とは言われなかった。“小さいものばかり陳べてみたい…”という言い方をされたようで、それが寺谷さんらしくて真実味を感じた。

 寺谷さんとのおつき合いは長いです。初めてお会いしたのは、寺谷さんが20代でまだ独身のときであった。その頃のまじめな純粋さは今でも変わることがない。

 感情はかなり内に押さえておられて、物腰はおだやかで軽率なところがなく自己をのり越えて進もうとする気力の強さを感じさせてくれる人だ。私はこのような人と一緒に絵を描いてゆけるのを幸せに思っている。

 寺谷さんは、建設関係の仕事で多忙な日々を過ごしておられる。なのに、二人展やグループ展をれながら市展や県展に積極的に出品されている。今年の第五十回県展入選作品のF80号「夏色の時」を印象深く見られた方も沢山あったと思う。

 中央に女性の坐像がある縦のものだったが赤や青や黄の鮮やかな色彩が舞う無垢で純な詩情が漂ういい作品であった。あのような作品は、デッサン力のある人でなければ到底できないだろう。寺谷さんのデッサン力は凄い。

 先日、今回出品される作品の一部を見せてもらった。展示は前期と後期に分けられ、前期がデッサンで後期が油絵になる。

 それでまずデッサンについて触れてみたい。

 デッサンは本来、対象の外形をなぞる習練ではなく、対象の存在の構造と感受性の原点をさぐる造形の基本であり、絵や彫刻のための素描にとどまらず、独立したひとつのジャンルでもある。そいうことをだれでも頭では知っているが、寺谷さんのデッサンほど、まざまざとそれを実感させられたことはない。

 寺谷さんのデッサンは習練ではけっして身につかない。モデルを女性らしく描こうとか、裸婦にならなければいけないとか、そのような表面的なことや概念的なものはまったくない。ただモデルを見て描くという透徹した思索のつみかさねがあるだけである。「見ること」と「表現すること」のはてしない不思議さが大きな魅力となっている。

 その不思議さが油絵を描く原動力ともなっているのである。

 執拗に繰り返し徹底して凝視する。その挙句それをすべて放り捨てて、心に残った残像ではなく新たに蘇ってくる像をキャンバスに捜し求めるのが寺谷さんの油絵である。一見するとアンフオルメルで、ほとんど形象はないように見えるが、しばらく作品を前に、たたずんでいると人物が見えてくる確固とした意志をもって、モデルを見ながら描いておられる寺谷さんの制作ぶりをそばで見ていて、絵というものは、完成させようなどと思わないで対象を見て描く過程が大事であることを知らされた。これが発展してどういう世界になっていくのかというより、これはこれで一つの完結した世界じゃないかという気がしたのである。

 風景でも同じことが言える。SMとF8の駟馳山の風景を見たが、鮮やかな色彩が静かに響き合う幻想的なものと、地味な色彩であっさりした情景に仕上げられたものがあった。

 私は今度の個展をとおして、私が寺谷さんの作品から味わった衝撃が、さらに多くの人々によってうけとめられ、検討される事を切望しています。

 (原文掲載)

独立美術協会会員  山本恵三

 

 

多彩な色を使った油絵と人物デッサンを展示致します。
明るく飾られた空間は見る人を楽しみませてくれます。
■期間中に展示替えあり
前期(15日―19日):デッサン
後期(20日―26日):油彩