開催中の展覧会

安田みつえ 銅版画展
2007.11/1(Thu)~13(Tue)

 

多彩な手法に新鮮さ

井上 嘉明

 

 安田みつえさんの銅版画展は、今回で三度目である。約二十五点が並ぶ。前回は姉・船井淑子さん(洋画)との二人展だった。安田さんは智頭町の出身で。鳥取大学で絵画を学んだ後上京。イラストレーターとして自由な立場で主に、書籍、教科書(たとえば「数学」「英語」などに、彼女の装画は新鮮で意外性がからみ、よく似合う)などの表紙を飾る作品を描いている。アクリル、パステル画も多い。

 安田さんにはもうひとつ、アーティストとして、表現の可能性を確信してたたかっている銅版画の制作があるのだ。イラストと銅版画を截然(せつぜん)と分けずに、相互に交感させ合っている。彼女の版画が、ときに美しい諧調(かいちょう)をもち、モダンな構成をもつのはそのせいだろう。

 一般に銅版画といえば、黒や濃い藍(あい)、茶系統のモノトーンが主調となり、緻密(ちみつ)で禁欲的なイメージがあるが、安田さんはそれより出発しながら、青、緑、赤茶などを大胆に駆使し、表現の領域を多彩に広げているのだった。ときにメルヘンチックに、ポップ調に――。

 そして近年、再三里帰り展をするのは、現時点での自分の姿を故郷の人々に開示したい思いがあるからだろう。そういう彼女の姿勢を「ギャラリーあんどう」が裏から支えて実現したのが、この版画展なのである。

 彼女にはまだフォルムを固着したくない、拘束されたくない思いが強いようだ。たとえば、ほぼA3サイズの五点の力作。「月・星・太陽」二点の大胆な構成の面白さ。「together」の単純化された中での淡青、淡緑の美しさ。「プロムナード」の果物の切れ端とも思える形がおりなす新鮮さ。「そんな日があった」には、どっか遊具のようなものが置かれ、童話風な雰囲気がある。線刻の特性を大切にしながら、太線のアクセントを試みる。

 コラージュ技法の模索は前展でも感じたが、今回はこの傾向を明らかにしている。たとえば「葉っぱ」「パズル」など――葉や花など身近にあるもの、思いがけない場所で発見した、小さいものへの共感と偏執がモチーフとして支えているようにみえる。新しいものとして、「motion」など格子状に構成した作品があった。

 適度に湿りけを帯びながら、明るく、どこかメルヘンチックな感じが漂うのは資質のひとつといえようか。加えて、小さいころ、自然豊かな故郷の川で小石を拾い、木の葉を集めて遊んだ思い出が、無意識のうちに血液に少しずつ溶け込んでいるのではないか、と思った。

(文芸誌「流水群」同人)

 

2007年10月31日(水)日本海新聞記事より