2F:過去の展覧会


Kendai Art Exhibition
2008.9/18(Thu)~9/28(Sun)

 

抽象画家Kendaiさん新作展です。
「-光に乗って無限へ- Kendai Art Exihibition」
から2年。細密な点描画の世界が広がります。

■Kendai:倉吉市在住

 

Kendai Art Exhibition に寄せて

 

無限に綾なす点描空間

 

 

点描の名作と言えば、スーラの「グランド・ジャッドの日曜日」が有名だが、この絵は、光の表現を求めて、緻密な点々で事物を描く手法が駆使されている。

先日、国立新美術館で大規模な展覧会が開かれたエミリー・ウングワレーの点々の絵には、アボリジニの宗教的なイメージが底流にあると考えられるが、草間彌生の水玉の点々の絵などは、作家自らの幻視体験とか無意識の世界に根ざしていて、ウングワレーの絵との共通性が指摘されることもあるようだ。

Kendai(東京藝術大学芸術学科一九八四年卒・倉吉市)の作品も、「点々の絵」の仲間に入ると考えたいが、そこには、長年培ってきたユニークな手法がある。

その仕事は、先ず一辺十三センチ前後の正方形のユニットを、五ミリ単位の方眼に区切ることから始まる。作家は、その小さな枡目の中に円(マル)形の「点」を細筆で丁寧に塗りつぶして描く。長い時間をかけて、飽きもせず黙々と…。

「点」の基本色は青。配列には規則性があるがランダムにもなり、最近作になってくると、大小や疎密の変化も見てとれる。そんなユニットが複数組み合わされて一つの作品となる。三十号程度の画面なら四十九枚。それだけでも三万個を超える「点」が画面を埋め尽くす。

どこまでも限りなく綾なす「点」は変幻する星々と化し、画面はさしずめ〝宇宙マンダラ〟といった様になる。さらにそこには、作者が少年時代に夢見たであろう、渦巻く星雲とか銀河を連想させるイメージが描かれたユニットや、電子機器の部品がコラージュされたりすることもある。

細やかな感性と天衣無縫さが合い混ざった、子どもが見ても面白いと感じるような作品を次々に創り出していくKendaiだが、かつて藝大で美学、美術史学を本格的に学んだがために、堂々巡りの論理の闇に落ち込む時期もあったとか。

知識や理論だけで絵は描けないということなのだが、現在の「点描」によって自分は世界とつながることができるのだと、前向きに断言できるようになるまでには、かなりの試行錯誤を重ねて苦しんだらしい。

今回のメイン作品の題名は「Infinity」。無限という意味で、作品の性格によくフィットしているが、やはり、画面の抽象性に当惑する人もいるかもしれない。

しかし、絵というものは、少なくとも一瞬が勝負の写真とは違って、幅のある時間の流れの中で描かれる。

絵を観る人は、画家が描いたのと同じ順序ではないけれど、絵の中の色や形を目でたどりながら、新たな時の流れに遊ぶことができる。

Kendaiは、そんな遊びの広がりと深さにおいても、無限であるような作品をめざしているにちがいない。

(美術作家・フナイタケヒコ)

 

2008年9月18日木曜日 日本海新聞掲載記事より