2F:過去の展覧会

「いとをかし」てらがきりょうこ 写真展
2010.5/22(Sat)~5/30(Sun)

 

写真家・池本喜巳氏に師事して約1年。おかげさまで"まち"がステキです。
■てらがきりょうこ:鳥取市在住

いと をかし 

   10代の頃から、写真は好きで良く撮っていた。しかし、池本喜巳写真教室に通うようになってから、私は初めて「写真」の真髄を知った。そういう意味で、写真を初めてからは1年生といえる。

 「何をする為に写真を撮るのか」

 「写真を撮って どうしたいのか」

先生が、教室でまず生徒に聞く最初の質問だ。この時から私は、目的を持って撮る事の喜びを教わった。思い出や記念、贈り物、コンクール、挿絵... などその狙いによって、カメラの奥の自分が問われる。シャッターを押す前の自問自答を重ねるうちに、「私が撮り続けたいもの、って何だろう」と考えるようになった。悩んで困って考え過ぎて、何度も行き詰まりながら、「そんな大きなテーマが、そう安々と決められる訳がない」と開き直り、とにかく私が胸打つ瞬間を、撮って撮って撮りまくる事にした。 撮りためていくうちに、自分の切り取った光景が、薄弱ながら一本の線上に在ると感じた。並べた写真には私の頭の中が詰まっていて、悩み続けていたテーマは、「言葉」で定めようとしていたから解らなかったのだと気付き、これが写真の力と再び知らされた。

 裸で持ち帰られる魚、母の必死な玉拾い、棒に刺された長靴、公園から聞こえてくるドナドナ、二人の間のみかん、そよ風をあびる立ち読み…

? 決して意図せず起こしているちょっぴり滑稽な”人”の行動は、思わずツッコミを入れたくなると同時に、抱きしめたくなる いとおしさが膨れ上がり、たまらない。その行動のセンスから伺える、その人の人柄、その人の1日。土地も時代も関係なく、単純に「人」って良いな、と思わせる日常。自分の想像範囲を遥かに超えた、「人」が生み出す思いもつかない光景が瞬きより速い速度で“まち”のあちこちで発生していて、私は、宝物を集めるような気持ちでその瞬間にシャッターを切る。

 

 

愉快で貴重な‘おかしな写真’    てらがきりょうこ個展

 

私事だが昨年、植田正治写真美術館で3回のワークショップを開講した。予想以上に若い方々が集まってくれた。 私の写真の教え方はかなり厳しい。かえってそれが良かったのか、その後の写真展などを通じ鳥取・倉吉・米子・松江と若者中心の教室が立ち上った。こんなに写真好きな若者がいたのかと驚いている。

 その中に28歳の寺垣涼子君がいた。彼女は18歳のころから、世界中の美術館を見てやろうとバイトでお金を貯めて37カ国を歩いた強者(つわもの)で、写真家の基本である行動力と体力を備えていた。ひょっとして努力次第でモノになるかもしれないと感じた私は「君は写真家に向いているよ」とおだてた。

 なぜかと言えば、6月に開かれる市美展なども応募者の平均年齢は60歳以上である。若者はほとんど見向きもしない。果たしてこれで良いのか。可能性ある若者に頑張ってもらいたい、という一念からである。

そんな私は、「写真家になりたいなら個展をしろ」と言っていたので、見かけより神経質な一面を持つ彼女は、私に対するプレッシャーでかなり苦しみながら鳥取の街を2千枚以上撮ったという。しかし苦しまなければ上達はない。その中の50枚ほどのセレクトを拝見した。

そこにはとても愉快な作品があり、「へぇー、寺垣君にはこんな一面があったのか」と再認識した。『いとおかし』のタイトル通り思わずニヤッと笑ってしまう。鳥取が大好きだと話す彼女。その中に写された人々や風景が身もだえするほどいとしいという。その思いがクローズアップにならず、独特の空間に切り取られているところにちょっと気弱な寺垣らしさがあり、新鮮で好ましい。

 以前、外国の写真家に「日本人の写真はユーモアの表現が少ないですね」と言われた。みんな演歌だというのである。その時は変に感心したが、その点寺垣流ちょっとおかしな写真は貴重な存在ではないか。

いずれにしても写真を自己表現の手段として、今までの写真愛好家の楽しむばかりの写真ではなく、何かを表現したくてデジタル技術を研鑽(けんさん)し、マジメに取り組んでいる若者が山陰にも出現している。その一人として大いに期待している。

池本喜巳(写真家)

 

2010年(平成22年)5月16日(日曜日) 日本海新聞掲載記事より

 

てらがき りょうこ 略歴

 

1980年 生まれ   鳥取市育ち

1999年         鳥取東高 卒業

                    フリーターしながら、放浪を繰り返す。

1999年         ニューヨークへ1ヶ月

2000年         東南アジア 5カ国へ3ヶ月

2002年         ヨーロッパ、北中南米を中心に2年間放浪 

                    30カ国を廻る

2006年         京都に住む

2008年         京都 引き上げ  鳥取生活再開

                    フランス、セネガルへ3ヶ月

2008年 9月    池本喜巳写真教室へ通い始める

2009年 8月    フリーターに終止符

                    池本先生に師事

2010年 現在   フォトアトリエ てらがきりょうこ 創設

                    写真業奮闘中